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馬場つげ研ニュース - 2009年1月12日(月)

展示品はコピー?うらわ美術館「氾濫するイメージ」展の格安つげ展示

2008年11月15日より、うらわ美術館にて「氾濫するイメージ―反芸術以後の印刷メディアと美術1960's-70's」と題した美術展が開催されている(2009年1月25日まで)。
ホームページによれば、「安保闘争や学園紛争などの時代状況を濃密に内包しながら」「様々なメディアを通して、あたかも氾濫するかのように盛んに展開された」「ヴィジュアルなイメージ」を、時代を代表する8名の作家を通して紹介する趣旨だという。

横尾忠則、粟津潔、宇野亜喜良、赤瀬川原平・・・。 錚々たるメンバーのなかには、昨年来、幾度目かのブームを迎えている漫画家・つげ義春さん(71)の名前もあるのだが、その展示内容が物議を醸している。あまりの格安ぶりに、つげファンの間で動揺が広がっているのだ。


展示内容は以下の通り。

1.『ねじ式』『李さん一家』等の1ページがA4普通紙に出力され、壁に画鋲留めされている。同一のプリントが何枚も重なり合うようにレイアウトされているので、これは「原画コピーレイアウト」とでも呼ぶのだろうか。

2.1991年12月に青林堂・ツァイトから出たマイルストン版画工房製「つげ義春版画」2点(『ねじ式』シルクスクリーン、限定300部、『岩瀬湯本温泉』フォトエッチング、限定500部)。

ポスターはかっこいい
詳細な説明は一切無く、同時に発売された『夢の散歩』(リトグリフ、限定200部)も展示されないなど、極めて不“テッテ的”。他の作家が原画を揃える中で、版画のみで美術展を乗り切ろうとするのであれば、最低まんだらけ出版の4枚や、JRのポスターを含めて総覧できないと、見る側としても厳しい。

3.新旧作品集が山積みに。古いものから列挙すると、

69年4月『つげ義春作品集 現代漫画の発見1』青林堂
69年9月『つげ義春初期短編集』幻燈社
69年12月『現代コミック8つげ義春集』双葉社
70年2月『現代漫画12つげ義春集』筑摩書房
75年6月『つげ義春作品集』青林堂
77年5月〜81年6月『限定版つげ義春選集1〜10』北冬書房
78年7月『現代まんが全集11つげ義春集』筑摩書房
84年7月『つげ義春作品集 ゲンセンカン主人』双葉社
86年7月『つげ義春選集』小学館
91年12月『つげ義春資料集成』北冬書房
91年12月『復刻版月刊ガロ増刊号つげ義春特集』青林堂
92年9月『完全復刻版つげ義春初期単行本集』文化の森
00年6月『つげ義春作品集ねじ式』青林工藝舎
03年5月〜7月『つげ義春初期傑作短編集(1)〜(4)』講談社
03年11月〜04年2月『つげ義春初期傑作長編集(1)〜(4)』講談社

ほかにも、『ガロ』67年5月号(『山椒魚』収録、背破れ)、67年6月号(『李さん一家』収録、状態並)、84年『木造モルタルの王国』(青林堂、経年によるシミ等あり、神経質な方は入札ご遠慮ください)。

これは解説プレートに「繰り返し刊行される全集や単行本の群を抜いた多さが」「マンガというメディアをこの上なく際立たせている」とあったのを受けての展示だと思うが(文章の意味も理解しかねるが)、であれば全作品集を集めればよいのに、何か意図があってのセレクトなのだろうか。
ははんこれがこの展示会のスタイルなんだなと思っても、たとえば、ライトヴィンテージの上記作品集を「触らないでください」と書かれると、オヤオヤこの展示は何を考えているのかなという興味が湧いて来る。結局つげ作品で触れられるのは、筑摩ハードカバー版全集のみ。

個人ファンで十分再現可能な展示にも拘らず、これらをわざわざ宮城の長井勝一漫画美術館からレンタルしてくるのも驚きだが、展示された作品集の中には、つげさんのサインや色紙がついているものがあるにも拘らず、レイアウトを優先して全く見せないのにはもっと驚いた。


いやはや、動揺を誘うほどの驚愕の内容である。格安というか、『チーコ』ならぬチープな展示と言うほかない。500円の入場料を考えれば仕方ないところもあるのだろうが、激動の60,70年代から8人の作家に絞り込んで、名前をデカデカとポスターに書くのであれば、やはり「もう少しどうにかならなかったのか」という思いは拭い去れない。
1月11日の学芸員ギャラリートークでは、「つげさんの展示がこれだけなのは、原画が少ないからです」との説明があったが、それは誤謬というか、まったく言い訳に過ぎないだろう。原画提供等、作家・関係者の協力が受けられなかったのが原因と推察するが、であれば今回の展示からつげさんを除くべきだった。そう思うほど、資料的価値の低い展示内容であった。


うらわ美術館外観。商業施設のワンフロアを占める。
つげ展示としては間違いなくC級だったが、その他7名はなかなか興味深く、特に赤瀬川源平の展示は原画も豊富で、明らかに力が入っていた。画期的だったのは「漫画主義」をクローズアップしたことだろう。赤瀬川が表紙を担当した関係でショーケースが作られ、『漫画主義』1〜12号(ただし『夜行』以降含まず)と、2枚のポスターが展示された。物自体は市場に未だ出回っており、安価とは言えないながらも目にする機会は多いのだが、『漫画主義』をキャプション付して美術展が扱ったのは、今回が恐らく初めてであろう。戦後マンガ史のみならず戦後美術史に位置づける第一歩として、評価すべき取り組みである。

同展は目録が完売するなど、相応の集客に成功したようだ。今後、4月から八王子市夢美術館、8月から足利市立美術館を巡回するので、浦和で見逃した方はぜひ足を運んでほしい。その際には、檸檬のようにつげ作品集を置いて帰ってみてはいかがだろうか。前衛美術展として、最終日に向けて資料的価値が向上していくという双方向のイベントはウエルカムであろう。そこで注意されるようなことがあれば、当会は一切の責任を負いません。

高田馬場つげ義春研究会HP班 - 1月12日00時50分更新

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